自動オシログラフとは
自動オシログラフは、落雷など自然現象に起因する電力系統の短絡・地絡現象や、電力用機器の劣化などによる故障発生時に、系統の諸電気量、保護継電装置の信号を、故障発生前(平常時)から故障復帰後まで自動記録し、故障の原因/場所の究明、保護リレーの応動/協調性を確認することを目的とした装置です。
自動オシログラフの変遷
1950年代、日本で初めて自動オシログラフが設置されて以来、当時の経済成長に伴った電力の需要、規模、技術革新により、ニーズ・活用方法も異なってきました。
自動オシログラフの変遷は、
に大別することができます。
ここでは、それぞれの時代での技術背景をふまえて、特長について記述します。
1. インクレス化
1978年6月に宮城県沖地震が発生しました。電力系統にも影響があり、自動オシログラフが動作しましたが、当時のカルパンチェ自動オシログラフは、記録にインクを用いていたため、地震の揺れによってインクが記録紙に飛び散り、波形が記録できない事態が起こりました。また、常時インクドラムが駆動するため、定期分解や部品の交換が必要となり、メンテナンス・保守作業の面でも課題がありました。
これらの課題を考慮し、安定性・メンテナンス性に劣るインク記録方式に代え、熱によって発色する記録紙(感熱紙)を用いた自動オシログラフが開発されました。これが、インクレス自動オシログラフです。感熱紙の熱源として使われているIC回路サーマルペンは、熱応答が速い(数ms~10数ms)ため、常時加熱をしておく必要がなく、起動してから通電されていたため、待機時はまったく駆動部分がありませんでした。この感熱方式の採用で、記録品位が良くなり、その保存性も向上し、日常の保守も容易となりました。
2. デジタル化
電力系統がさらに大きくなってきたため、省力化が進み、小規模な電気所は無人化されてきましたので、自動オシログラフの記録データを有人電気所に伝送する必要が出てきました。そこで開発された技術が、アナログ量のデジタル化です。
デジタル化することで、これまでの記録紙への記録に加え、通信回線を使ったデータ伝送が可能になりました。また、紙媒体では、保管場所や保管環境によっては、長期間保存時の劣化などが懸念されてきました。そこで紙に代わる記録媒体としてフロッピーディスクが採用され、デジタル化されたデータが記録できるようになりました。デジタルデータは再現性に優れており、必要時にはデータを読み出し印字することで、常に鮮明な記録を得られるようになりました。
3. 解析の高度化(コンピュータ化)
通常、記録紙上の波形は専用のルーペで読みとっていましたが、そのときの読み取り誤差は、個人差にもよりますが、±0.2mm程度でした。計測の高精度化が求められる状況において、人為的に波形を読み取り、計測演算することは限界に近づいてきました。
これらの作業を人に代わってコンピュータに行わせたのが、コンピュータによる解析です。コンピュータの使用によって、波形の計測、拡大・縮小などの編集、複雑な解析計算を、マウス操作で行うことができるようになりました。今日のコンピュータ解析システムでは、人の操作を介することなく、測定結果や解析結果を自動表示できるようになっています。
4. 多機能化
デジタル化やコンピュータ化により、自動オシログラフは活用範囲を広げることができるようになりました。同時に高い電力品質が求められる時代になり、瞬時電圧低下、フリッカ、高調波、電圧不平衡、周波数などの記録機能も自動オシログラフに統合されました。また、自動オシログラフが測定した波形データを活用し、即時に送電線の故障点を表示する機能(フォールトロケータ)や、さらには、故障原因を推定する機能へと多機能化は進んでいます。
自動オシロの年代順一覧表
1952年 | 2現象ブラウン管オシログラフ装置を開発 フランス カルパンチェ社製自動オシログラフ輸入開始(八洲貿易) |
1976年 | クエート水電省(MEW)に自動オシログラフ納入(初の海外納入実績) |
1977年 | アナログメモリ形自動オシログラフ装置を開発し、国内初のオシロ波形データ伝送を実用化 |
1978年 | ICペン式インクレス自動オシログラフ装置(AMP形)開発 電力系統動揺記録装置(PQVF記録装置)開発 |
1984年 | 集約型自動オシログラフ(AMF-2000)開発 |
1985年 | 自動オシロ伝送装置(AMT-2000)開発 ハンディ自動オシロ(HAO-608)開発 |
1987年 | デジタル自動オシロ(AMX-1600)開発 |
1989年 | ハンディ自動オシロ(HAO-608)を改良、HAO-1000開発 |
1995年 | 統合型オシロ・多機能総合計測装置(GME-1000)開発 |
1996年 | 自動オシロ伝送装置(AMT-3000)開発 |
1997年 | 総合記録装置(AMF-3000)開発 |
1998年 | オシロデータ活用型架空送電線故障点標定システム(FL)開発 2003年 電力品質測定装置(PQR-1000)を開発 |
2004年 | ネットワーク型総合記録装置(AMF-4000)開発 ネットワーク型総合計測システム (NEO-5000)開発 デジタル自動オシロ(AMX-2000/2200)開発 |
2006年 | 系統現象記録ユニット(PSR-1000)を開発 |
2007年 | オシロデータサーバ(DSVR-1000)を開発 送配電線用サージ型故障点標定システム(SFL-2000)を開発 |
2013年 | 自動オシロデータ総合解析・検索システムファーストエディション開発 ネットワーク対応型オシロユニット(NEO-1000)開発 |
2017年 | Multipurpose Power System Recorder(AMT-7000)開発 |
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